桃 太 郎
あらまし
洗濯に出かけていたおばあさんは、川から流れて来た大きな桃を拾います。おじいさんと食べようと、桃を切ってみると、中から赤ん坊が飛び出してきました。子どものいなかったおじいさんとおばあさんは大喜び。桃太郎と名付け大切に育てました。
すくすくと育ち、強い男の子になった桃太郎は、ある日、鬼が島へ行って悪いオニたちを退治すると言い出します。おばあさんは桃太郎にきび団子を作って持たせました。鬼が島へ向かう道中、イヌ、サル、キジに出会い、きび団子を分け与えました。
イヌ、サル、キジを仲間に加え、鬼が島へ向かうと、イヌは鬼をみつけると吠えて飛びかかり、サルはひっかき噛みついて、キジは空からオニたちをつついて攻撃しました。桃太郎も刀を振り回し、ついにはオニの親分をやっつけました。
桃太郎と仲間たちはオニがあちこちから奪っていった宝物を持ち帰り、桃太郎はおじいさんおばあさんのところに帰って、幸せに暮らしました。
3mの青鬼と対峙する桃太郎たち
風船職人SHINOのコメント
桃太郎は桃から生まれます。なぜ、桃なのでしょう。
桃について調べると、不老不死や生命力の象徴であり霊力を司るものとされてきたという説があります。一方、オニからは破壊や魔性などを連想します。ちょうど反対の意味の関係、つまり対義関係になっているんですね。
また、イヌ、サル、キジから連想するイメージは次のようなものでしょう。イヌのイメージは賢い、忠義。サルは機敏。キジは賢い、美しい。これに対して反対のイメージは愚鈍で醜いといったところでしょう。これはちょうど、オニのイメージに当てはまります。
このようにイメージの対義関係がハッキリしているので、突飛な設定でも、聞き手にとって受入れやすいのだと思います。桃太郎がおとぎ話の代表的なお話として語り継がれてきたのも、こういったことが一因なのでしょう。良いものは、要素を解きほぐすと、とてもシンプルにできているものです。
これらを踏まえて、作品づくりに活かしたいところです。
作品づくりについて
鬼が島で桃太郎たちとオニが戦っているシーンを作りました。両者のイメージの違いをを際立たせるため、大きさのコントラストをつけました。
赤い鎧に陣羽織の桃太郎はオニに怖じ気づくことの無い冷静な表情。足下のわらじの紐も、膨らませていない風船で作っていて、オニと比べて、細かい作りになっています。作品展の会期が長かったため、作品が長持ちするように少し太めの風船を使いました。がっしりした身体に見えてしまいますが、もうワンサイズ細い風船で作れば、もっとそれらしくなったように思います。
バルーンアート作品は細い風船で作るほど寿命が短くなります。作品の寿命も考えたデザインにしなければならないのは、バルーンアートの難しいところですが、そういった工夫ができるかどうか、このあたりは腕の見せ所でもあります。
イヌは紀州犬をモチーフにしています。イヌ、サル、キジは、かわいく作るのではなく、賢そうな顔になるように試みました。
オニは身長3mの巨大サイズです。展示会場への搬入は、上半身と下半身に分け、現場で合体させました。こん棒を持ち、ギロッとにらみ下ろし、けわしい表情をしています。力強さ、そして鈍さを表現するため、太いサイズの風船を使って粗く作っていて、身体のサイズの割りに大きな頭で、脚は少し短足気味に作りました。